いつでも先物取引
日本は戦後の改革で、世界で最も平等化の進んだ国といってよく、支配者と被支配者の対立関係が最も稀薄な国になっている。
その一端に教育水準の高さというものもある。
だから必ずしも日本の企業を卑下する必要はないと思うのですが、今回のバブルの生成・崩壊の過程での反省点は、企業経営がもう少し長期の視点を持つ必要があったことだと思います。
よく考えてみると、企業が社会にお金を出すというのは、長期的な利益を維持するための保険料のようなものです。
社会から反感を買わないとか、社会と敵対しないとか。
あるいは海外に出ていったときに、現地企業を完全に打ちのめさないとかいうのも、みな同じ考えだと思います。
私は「バトルの発想」と「ゲームの発想」と表現しています。
これまでの日本企業は「バトルの発想」が強すぎた。
武家社会の影響が残っているのかもしれませんが、どうしても生きるか死ぬかでやってしまう。
一方、ゲームというのは、相手の生存権を保証することとルールを明確にするということが要件で、競争はするわけです。
「バトルの発想」を「ゲームの発想」にまで緩和した方が、長期のプロフィットになる。
日本企業は長期的な視野に立った行動をすべきだという反省点はあったと思う。
ただ利益追求が間違いだというのは、現実から眼をそらす考えで無理があると思います。
バブル崩壊後、変化しつつあるもうひとつは終身雇用制です。
個人はいったん入社すると、結婚があって出産があって運動会があってお葬式まで企業と一体です。
「企業社会」という言葉がありますが、本来、「社会と企業」という関係のはずです。
でも日本では企業社会。
その鍵を握ってきたのが、年功制であったと考えます。
年功制でない企業があれば、若い人のある比率は年功制でない方へ行ったはずです。
ところがすべての会社が年功制だったら、それしか選べないわけで年功制のある会社に入るしかない。
ところでこの年功制の場合、いったん途中まで働いたら最後までいないと損なのですね。
しかも年金制度なども、企業を出たら放棄しなければならない。
一橋大学の中谷巌先生があるシンポジウムで紹介されていましたが、企業のなかで役員一人当たり一年間に実物給付で約七百万円の交際費などが使われている。
もし、給与として払ったお金から同じ金額を使うとなると、所得税の支払い分があるので企業は二千万を払わなければならない。
ところが企業内の経費として処理できれば七百万で済む。
こういう税制の歪みがある。
これも個人を企業に釘づけにしてしまう要因のひとつです。
この年功制、終身制の雇用慣行が今、変わりつつあります。
三つの背景があります。
第一に、年功制でない能力制を採用する外資系企業の参入。
第二に、サービス化の進展、とくに知識労働の増大にともない生産性の著しい個人格差が生まれはじめ、年功制が機能しなくなってきたこと、第三に、若年層を中心に企業に対する帰属意識が薄れてきていることです。
日本の雇用慣行は確実に変化していくと思います。
仮に日本でも、個人と企業との固定的な結びつきが弱まり、労働力の流動化が起きてくると、教育制度がかなり変わってこざるを得なくなります。
たしかに高校までの教育は非常にレベルが高いといえる。
ただ実務ベースの専門教育は、これまで終身雇用・年功制度のもとでOJTが中心でした。
それに企業は社員に、入社してから留学に出したりしてお金をかける。
ところが終身雇用が崩れてくれば、できなくなる。
企業はある程度スキルを持った人を採るようになります。
そうなると、大学入学で勉強はとりあえず終わりとして、大学の四年間を人生のなかでの唯一の遊ぶ期間だという考え方は成り立たなくなる。
大学に入って専門技術を身につけなければならなくなる。
そのためには一方で、大学の改革もしなければならない。
日本の企業と個人の結びつきの変化により、大学教育が質的に変わる可能性が出てきています。
H谷川たしかにそうですね。
大学の教育に関していうなら、とくに中曾根政権以後十年間、驚くほど理工系の研究室が荒廃した。
私が自分の母校(大阪大学)へ行って、たまたま話をしたときに、「どうしてこういうことになったのか。
何とか打開する方法はないか」という質問が出た。
「簡単です。
大学も族議員をつくりなさい。
東京大学法学部は族議員の養成所ではない。
官僚の養成所です。
族議員の候補者をつくるのであって、族議員そのものをつくるのではない。
だから東京大学法学部は、そのかぎりでは国立大学のチャンピオンのための族議員をつくってはいない。
同じことが警察にもいえる。
警察も今だめなのは、族議員がいないからです。
警察出身の国会議員はいるが、ごくわずかです。
二、三人しかいない。
しかも、そのせっかくの警察庁出身の者が、警察のために何も働いていない。
族議員ではないからです。
族議員をつくるのは簡単です。
わが大学のために働く国会議員を、わが大学から選出すればいい」。
そういう話をしたら、総長が感心していました。
U草最近のはやり言葉に、「三つの向き」と「三つのまわし」というのがあるそうです。
「上向き」「内向き」「うしろ向き」の三つの向き。
「あとまわし」「たらいまわし」「根まわし」の三つのまわしです。
企業内部の官僚主義化を示す言葉です。
日本の産業構造の変化で、もうひとつつけ加えておきますと、アメリカ、イギリスがたどったように、金融産業というのが、サービス化が進む産業構造のなかで、善し悪しはともかく中核産業の一角を担うことになります。
金融資産の残高増大が進みます。
H谷川日本は今、個人貯蓄の形成額では圧倒的に世界一でしょう。
それから日本の金融機関の残高も世界一でしょう。
それに照応した金融市場、制度整備が行なわれているかといえば、全くない。
とくにけしからんのは商品市場です。
上場商品の数を今のように制限するのではなく、商品取引所の実勢にもとづいて選択するということをなぜやらないのか。
やはり官僚統制のいちばんの弊害ですね。
U草金利の自由化が進んでも、いまだに役所からレートのチェックが入るとか、レートの競争もなかなか進まないという過渡期的現象が続いている。
ただ、いずれ自由化が進んでいくと、当然、淘汰されるところと、強大化するところとが出てくると思う。
イギリスで今でも金融産業が力を持っている中心は、アセット・マネジメントと呼ばれる資産運用ビジネスです。
日本の証券業というのは、今まではブローカー主義、アメリカの証券手数料の自由化の延長上に発生したサービスは、資産運用補助のサービスでした。
預かった残高に比例した手数料をもらうということです。
売り買いの頻度は手数料に影響しません。
サービスの競争はあくまでも運用パフォーマンスで生じます。
固定手数料率の下では、証券会社の収入は、売買の量に比例し、顧客の利益に反した売買が行なわれやすいのですが、自由化後、その問題は解消された。
運用パフォーマンスをめぐって企業が競争をすれば、メリットが顧客にも及びます。
運用パフォーマンスというのは、情報力、洞察力に決定的に依存します。
そういう意味で、金融産業は知的集約産業となります。
ここに大きな付加価値を生み出せる企業は発展して得るのです。
H谷川それに関連して税制の問題があります。
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